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神戸地方裁判所 平成4年(わ)499号 判決

本籍

京都府城陽市寺田中大小五四番地

住居

兵庫県尼崎市東園田町二丁目三九番地の九

会社役員

岡本良彦

昭和二九年一二月二九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官巖文隆出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇〇万円に処する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

被告人において右罰金を完納することができないときは、金八万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市西区新町一丁目二四番八号(平成二年一月一一日までは同市淀川区宮原四丁目一番四五号)において、「コスモトレーディング」などの屋号で衣料品販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  平成元年分の総所得金額は二億二三五九万四一〇一円で、これに対する所得税額は一億六六五万三五〇〇円であるにもかかわらず、同年一月一日から一二月三一日までの間、事業にかかる売上代金を東海銀行新大阪支店の岩門護名義、同銀行の宜喜節江名義、住友銀行新大阪支店の横川なぎさの各普通預金口座等、借名の普通預金口座で取り立てるなどして、個人事業を行っていることを隠蔽し、右所得を秘匿した上、右所得税の確定申告期限である平成二年三月一五日までに、兵庫県尼崎市西難波町一丁目八番一号所在の所轄尼崎税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで徒過し、もって、不正の行為により、平成元年分の所得税額一億六六五万三五〇〇円を免れ、

第二  平成二年分の総所得金額は一億八五八八万五六五三円で、これに対する所得税額は八七〇六万八六〇〇円であるにもかかわらず、前年分と同様に売上代金を借名の普通預金口座で取り立てるなどして個人事業を行っていることを隠蔽し、総所得金額のうち、事業所得の全額である一億七八二八万八九〇三円を秘匿した上、平成三年三月一四日、前記所在の尼崎税務署において、同税務署長に対し、平成二年分の総所得金額が七五九万六七五〇円で、これに対する所得税額が六万七五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額八七〇六万八六〇〇円との差額八七〇〇万一一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の公判廷の供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(検甲九一号)

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(同五七ないし九〇号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(同四号)

一  同作成の各査察官調査書(同五ないし二一号)

一  日根野文三、有馬頼寿、高木茂行、辰巳肇、松井英樹、田村智治、岸田晋二郎、湛佐東、佐々木文政、木村清江、間﨑鐵雄、春名強、大空良景、中山惠子、長澤優子、山村節江、加渡善凡、松田淳子、岡本慶子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(同二二ないし四一、四三ないし五六号)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同一号)

一  佐野邦子の大蔵事務官に対する質問てん末書(同四二号)

同第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同二号)

一  大蔵事務官作成の証明書(同三号)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するので、所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により、犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金を合算した金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇〇万円に処し、犯情により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、被告人において右罰金を完納することができないときは、同法一八条により罰金額中八万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤光康)

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